【ライブレポ】永遠にフェアウェルしないバンド。チープ・トリックとファンが交わした「契約更新」の夜

ライブレポート
永遠にフェアウェルしないバンドへ

いよいよ待ちに待った10月1日。チープ・トリックの「フェアウェル・ツアー」最終日は、聖地・日本武道館での開催ばい。
空は、雨が降ったり止んだりで、すっきりとせん。
9月30日と10月2日は曇りのち晴れやったけん、これはある意味、感傷的な涙雨かもしれんばいね。

ばってん、感傷に浸る暇はなか!まずはグッズ売り場。
長蛇の列は覚悟しとったばってん、いやー、まさかこれほどとは!なんとかTシャツや缶バッジば手に入れられたのは良かったばい。

武道館、1階東列からの視点

そして開場。
運よく手に入れた1階の東列は、段差があるけんステージ全体が見やすかと。
アリーナ席は近いけど、前に背の高い人が来たら見えんくなるけんね。
今回は本当によい席が取れたと改めて実感するばい。

(ここでちょっと苦言ばい。平たいフロアでのライブで、携帯で動画ば撮るのは本当にやめてほしか。みんな良い動画ば撮ろうと、両手ばめいっぱい掲げるけん、後ろの人は見えんくなる…このあたり、いつか改善してほしいと切に願うばい。)

そうそう、1階の正面には湯川れい子さん伊藤政則さんの姿が遠目から見えたばい。
やっぱ、この「最後」の瞬間ば見届けるために、ちゃんと来とらっしゃるんやね。

ステージ上部のスクリーンに映し出される、ブライアン・アダムスの追加公演の案内とかば見よったら、いつのまにか武道館の2階席のてっぺんまで人がぎっしり。
やっぱ「最後」やけん、全国からファンが集まっとるんやろうね。

感傷を打ち破る「ハロー・ゼア」

こういうビッグアーティストのライブは、だいたい10分押しぐらいで始まるんやけど、なんと開演時間19時になったとたん、武道館の照明が、ドンッ!と消えたったい!

あー!!メンバーの姿が見える!!
おー!!あのイントロは!!ハロー・ゼアばい!!

いつもどおりに全力演奏!一気にテンションが上がるばい!まわりはみな総立ち!俺ももちろん立ち上がる!
オープニングの熱狂から、さらに会場のボルテージは上がり続ける。
怒涛のセットリストが畳みかけられる。

「カモン、カモン – Come On, Come On」、「ルックアウト – Look Out」、「ビッグ・アイズ – Big Eyes」、そして「ニード・ユア・ラヴ – Need Your Love」。

いつものチープ・トリックがおる!とテンション上がりまくってるとこで、俺は気付いた(遅すぎ?いやそげなことはなか!)。
これ、擦り切れるぐらい聞いた、『ライブ・アット・武道館』のA面の流れそのままやん!!!

ただ、その次は『アット・武道館』のB面1曲目である「エイント・ザット・ア・シェイム – Ain’t That a Shame」ではなく、「今夜は帰さない – Clock Strikes Ten」がきた。

「今夜は帰さない」は『アット・武道館』のラストの曲ってのはみんな知っとると思う。
そやけん、これで武道館再現シリーズは終わりかな?って思ったら、次はまさかの武道館バージョンの「エイント・ザット・ア・シェイム – Ain’t That a Shame」!ファンサービスとサプライズの応酬に、もう会場全体が歓喜のるつぼばい!

そして、演奏の途中でふと改めて思う。

リックの息子のダックスのドラミングは本当に凄まじか。
オリジナルの演奏に限りなく忠実でありながら、楽曲をよりパワフルにしてくれとる。
バンドがこれほどの疾走感に溢れて走り続けられるのは、ダックスの貢献が大きいのは間違いないはずばい。

続いて、あの強烈なドラミングがリードするは、ファースト・アルバム収録の「エロ・キディーズ – ELO KIDDIES」ばい!
この曲は、単なる初期の名曲じゃなか。
社会が子どもたちを犯罪者にしたてあげる構造を描いた、社会風刺を伴う楽曲ばい。
ハロー子どもたち!世の中、金がすべてばい!と言いつつ、そんなんに騙されんなよ!ってのが込められとる。
初期のチープ・トリックが持っとった反骨精神が、現代の武道館に、ダックスのパワフルなビートに乗せて鮮烈に蘇った瞬間やったっちゃん。

そして、間髪入れずに「ハイローラー – HIGH ROLLER」が続く!
「ハイローラー」は、大金を賭ける、リスクを恐れん人、派手に金を使う人って意味ばい。
この曲ば「エロ・キディーズ」の次に歌うのは、バンドからのメッセージとして、意味があると俺は思うっちゃんね。
「エロ・キディーズ」が社会に搾取される側、そして「ハイローラー」は搾取する側、という対比ができるけんくさ。
このあたりの選曲には、思わずニヤッとさせられるばい。彼らのメッセージ性は今も健在ということやんね。

続けて「ザ・バラッド・オブ・TV・ヴァイオレンス – THE BALLAD OF TV VIOLENCE (I’m Not the Only Boy)」が投下されたばい!
この曲の批評性も凄まじか。
テレビで戦争や暴力シーンが日常的に流れることで、子どもたちがそれを見て育つことへの警鐘、メディアが暴力ば正当化・娯楽化する問題に鋭く切り込んどるとよ。
「僕だけじゃない(I’m Not the Only Boy)」という歌詞は、「みんながそう育てられとる」という、社会への痛烈な問いかけなんよね。
この曲がぜんぜん古くならんのは、曲も歌詞も普遍性があるけんばい。
そこが、このバンドの変わらん魅力なんやろうね。
彼らは、ただのロックンロール・バンドじゃなくて、常に時代に問いかける「語り部」でもあるっちゃなかろうか。

サウンドの変遷と、止まらない探求心

中盤では、バンドの音楽的探求心ば示すような選曲も光る。

「ザ・バラッド・オブ・TV・ヴァイオレンス」の熱狂から一転、「ブロントサウルス – Brontosaurusからの「カリフォルニア・マン – California Man」という渋い流れには唸らされたばい。

「ブロントサウルス」は、7インチシングルば持っとるばってん、初めて生で聴いたときのサウンドの変化には本当にびっくりしたのをよう覚えとる。
まぁ、スティーヴ・アルビニ・プロデュースということもあって、この頃のバンドの方向性がヘヴィーな感じになっとったけんね。
彼らは常に同じ場所に留まらず、サウンドを進化させることば恐れんバンドである、という証明ばい。

そして「今」を叫ぶ新曲:未来への希望

そして、ライブ中盤に飛び出したのが、出たばい!!
新曲「トゥエルブ・ゲイツ – TWELVE GATES」ばい!

このタイトルを聞けば、やっぱ聖書の「12の門」ば想像するね。
歌詞にも「鍵がどこかに埋まっとる」といった表現があるけん、モチーフにしとるのは間違いなさそうや。
ばってん、この曲が素晴らしいのは、単なる宗教的なテーマじゃなくて、最初は迷いや恐怖があるけど、最終的には「変化」「再スタート」「協力して進む未来」希望に向かうという物語になっとるところばい!

さすが、チープ・トリック!いつまでも走り続ける彼らの「未来志向の精神」が、この新曲からもひしひしと伝わってくるばい。
彼らは「フェアウェル」を口にしながらも、その音楽は常に「次」ば指し示しとるったい!

12弦ベースが語る、バンドの厚み:ベーシスト、トム・ピーターソン

そして、ここでスポットライトは、バンドの強固な土台を支える男へ。
ロビンとリック、ダックスという顔ぶれに負けん、ベーシスト、トム・ピーターソンの見せ場がやってきたばい!

トムのトレードマークである12弦ベースの重厚な音色が唸りば上げる、圧巻のベースソロ!そこから、おなじみの名曲「アイ・ノウ・ホワット・アイ・ウォント – I KNOW WHAT I WANT」へと繋がったばい!

キーを落とさずテンションマックスで歌い続けるロビンが、この曲でちょっと休める、まさに絶妙なタイミング。
そして、しっかしまぁ、この12弦ベースがこれだけ似合う人も他におらんばい。
12弦ベースといえば、このトム・ピーターソンが真っ先に浮かぶもんね。

(ちなみに、俺も12弦ベース、どこぞの楽器店で試し弾きさせてもらったことあるけど、音の広がりがほんとすごくて、リードギターに近い弾き方もできるので、すごかなぁ〜って思ったっちゃん。
ばってん、弦が高いし手に入りにくい、チューニングが大変ってとこで、あまり流行らんと思う、って楽器店の人に言われたのば、よう覚えとる。)

トムの12弦ベースが生み出す重厚な音の壁こそ、チープ・トリックのサウンドに欠かせない「厚み」ばいね。

武道館とファンが創る「永遠の炎」

ライブは、「オン・トップ・オブ・ザ・ワールド – ON TOP OF THE WORLD」から、「オー・キャロライン – OH CAROLINE」という美しい流れへ。

そして、武道館での演出として予想しとった通り、バラードの代名詞「永遠の愛の炎 – THE FLAME」が!
今回、武道館という聖地やけん、「ヴォイシズ」と「永遠の愛の炎」を両方やるのはなさそうやなと思っとったけど、やはりこの曲になったね。

感動的なバラードのサビで、会場全体が、観客の携帯のライトの光で満たされた瞬間は、まさに鳥肌もんやった。
静かに、しかし熱狂的に盛り上がるこの演出は、武道館のファンからの、バンドへの愛とリスペクトを示す、最高の演出やったんやなかろうか。
会場が一体となって創り出した「永遠の愛の炎」ばい。

本編の熱狂と、切なさが交錯するアンコール

そしてライブは最高潮へ!「甘い罠 – I WANT YOU TO WANT ME」から「サレンダー – SURRENDER」という、誰もが待っとったキラーチューンの連打!
会場の熱気は爆発し、本編が終了したときには、もう体中の水分が全部飛んだんじゃなかろうかというほどの熱狂やった。
武道館、ちょっと蒸し暑かったけん、かなり汗かいたし手を叩きすぎて痛くなったばい・・

ばってん、「いやいやあの曲もこの曲も、まだ残っとるばい!」という気持ちが、体中を駆け巡る。
大きなアンコールを求める手拍子が続く。
早く演奏が聞きたいけど、もう終わりに近づいている切なさが、歓声と交錯しよるばい。

アンコール一曲目は、なーんと「サヨナラ・グッバイ – AUF WIEDERSEHEN」!
個人的には、この曲で本編終了のイメージやけん、アンコールのオープニングとか、めっちゃ新鮮な感じやった。
そして、おなじみの「ドリーム・ポリス – DREAM POLICE」が続く!
リックのピック大盤振る舞いバラマキもあり、会場のボルテージは再びマックスへ!

次に何がくるか?って思ったら、「グッドナイトナウ – GOOD NIGHT NOW

これで、本当に終わり…という切なさが、会場全体を包み込む。
メンバーがステージ中央に集まる。
会場全体が割れんばかりの拍手と、「Thank You!」の声に包まれ、誰もがこの「フェアウェルツアー」の静かな終わりを予感しとったばい。

ライブは感傷を拒否する「不屈の魂の証明」

怒涛のライブは、文字通り「フェアウェル感なく」、ただひたすらに「ロックンロールの祝祭」として進行した。
ロビンは、全盛期と変わらないキーで、時に力強く、時に甘く歌い上げる。
彼の歌声は、単なる懐メロじゃなくて、「我々は今もここにいる」という、強い意思表示やった。

今年77歳のリック・ニールセンは、確かにかつてのような動きの激しさはなかったかもしれん。
ばってん、その確かな存在感と、一瞬の隙も許さないギタープレイは、彼のキャリアと、このバンドの不屈の魂そのものを体現しとったばい。

彼らの歴史は、過去の文章でも触れたように「栄光と葛藤」の連続。
ばってん、彼らは今日、武道館のステージから、その歴史に感傷で幕を下ろすのではなく、「俺たちのロックは今も最高潮ばい!」という、生きた証明ば突きつけとった。

真のラストメッセージ:「Up to you」の衝撃

メンバーが深々と頭を下げ、最後の別れを告げようとした、その時。

ロビンが、マイクを口元に戻し、会場全体をまっすぐ見据えた。

彼は、一瞬言葉を切り、ニヤリと笑う。(ここは表情が見えんかったけん、俺の妄想シーン)
そして、指で観客を指し、強い意思を込めた声で言いきった。

「チケットには、”フェアウェル”とか書かれとるかもしれん」

ばってん、また会えるかどうかは…君たち次第ばい

「Up to you!(アップ・トゥー・ユー)」

その瞬間、武道館の空気は一変した。
これは「さよなら」の儀式じゃなか。
これはバンドがファンに突きつけた、「ロックンロールの契約更新」の言葉やったったい。

チープ・トリックの真の「終わり」は、彼らが勝手に決めることじゃなくて、観客である我々が、彼らの音楽ば求め続けるかどうかにかかっとる。

彼らの「フェアウェルツアー」は、「我々は終わらん!」という、不屈の魂の証明やった。

今日のライブは、感傷の涙じゃなくて、彼らが再び日本で演奏するための『契約更新』ばファンと交わした瞬間やったばい。

チープ・トリックは、我々の「Up to you」という熱い思いが続く限り、いつでも戻ってくる準備はできとるばい!!

X(旧ツイッター)にも書いたけど、次のツアータイトルは、フェアウェルツアーアゲイン!とかフェアウェルツアーおかわり!とか、どうやろ?
長時間の演奏がしんどかったら、フェスでもよかやん!!誰か呼んじゃり!!、いやほんとお願いします!!

たのんばい!!!!

コメント

タイトルとURLをコピーしました