スタントマン映画『武替道』を観た。
作品全体を通して、最も心を揺さぶられたのは、トン・ワイの存在感やった。
スチール写真やポスターでは、フィリップ・ン、テレンス・ラウ、そしてトン・ワイの3人が並んでいるけれど、実質、主役はトン・ワイたい。
彼を知らん人もおるかもしれん。
トン・ワイは、あの伝説的映画『燃えよドラゴン』の冒頭で、ブルース・リーに「Don’t think. Feel.(考えるな、感じろ)」と教えられた(頭はたかれた)青年ばい。
あれから50年。今度は彼自身が、若いスタントマンに「感じろ」と伝える立場になっとる。
なんちゅう巡り合わせやろうか。
映画の中で、彼がブルース・リーの銅像をじっと見上げる場面がある。
台詞ひとつないけど、そこには香港映画の魂を受け継ごうとする者の、静かな覚悟が滲んどる。
胸にくる、じわっとくる、そんなシーンやった。
冒頭のアクションも印象的ばい
。どう見ても、あれは『ポリス・ストーリー』のオマージュ。ジャッキー・チェンば彷彿とさせる派手な撮影シーンで幕が開くけん、
「あーっ、こればい! こういうやつ観たかったと!」って一気に気持ちが乗ったっちゃんね。
ばってん、話が進むにつれて、テンションはぐっと下がる。
まるで、スタントマンたちの裏側をリアルに描いたドキュメンタリーのようになっていく。
夢と現実のあいだでもがく若者たち、過去の過ちを引きずるベテラン──その姿は痛々しかった。
特にキツかったのは、事故で車椅子生活になった元スタントマンの奥さんが、サム(トン・ワイ)を責める場面。
「よくものこのこ顔出せたわね! この人が事故ったせいで、家族がどれだけ大変だったか…!」
正論すぎて、サムは言い返せん。
少しづつお金を送っていたようだけど、それすら突き返される。
サムは頭を下げてだまって去るしかない。
その沈黙が、またキツか。
さらに娘が高熱を出したとき、サムは大怪我したスタントマンの病院対応で手一杯。
家族を優先せず現場を取ったことで、妻にビンタされるシーンもいたたまれん。
映画の核になっとるのは、“命懸けの美学”たい。
「Never Say No」──どんな危険なシーンでも断らん。スタントマンの信念ばい。
それはただの根性やなか。映像のリアルを守るための、矜持たい。
でも今の時代、その矜持は「古い」「非効率」「危険」と切り捨てられる。
コンプライアンス、効率、安全第一。
サムがボロボロになりながら、「俺たちは一コマ一コマに命をかけてきた!」って叫ぶ場面は、ほんとぐさっときた。
彼らの時代は、もう二度と戻らんやろう。
でも香港魂は継承されとるはず。
エンドロール見てほんとホッとした自分がおる。
物語の終わりは、ハッピーエンドやなかった、と思う。
むしろビターエンドと感じた。
でも、それでよかったと思える。
「全員が報われる」なんて甘くない現実を、ちゃんと描いとったけんね。
これからもワクワクドキドキする、香港魂を持った作品を作り続けてほしかばい。
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